白夜行

白夜行

白夜行

東野圭吾のベストセラーを読みました。つらい人生を歩む子どもたちの話。以下ネタバレ。
ひどい目にあわされていた子どもたちが、その境遇から抜け出すために犯罪に手を染めてしまい、太陽の下を堂々と歩くことができなくなるという話です。白夜の中を延々と行くような人生になってしまった、という意味で「白夜行」。
やー、厳しい人生で大変だっていう中心軸は納得しながら読めたんだけど、その軸の周辺で、主人公たちがよけいな犯罪に手を出して、人を不幸な目にあわせていくのは、よくわからなかったなぁ。金目当てだったり、嫉妬からくる凶行だったりしたみたいだけど、それはもう太陽でも白夜でもなんでもない、ただの闇だよな。
よけいな犯罪の描写をぜんぶ削除して、単純な逃避行にしたほうが、すっきりしたんじゃないすかねぇ。そのほうが、テーマも明確になっただろうしね。たくさんの事件が描かれているんだけど、その一部は、興味本位でつけたされたもので、作品のなかで機能していない感じがしました。残念。
やー、しかしまぁ、東野圭吾の文章ってのは、徹底的に読みやすさを追求したものですね。とにかく読みやすい。個性をぜんぶ排除して、難しい文脈もとっぱらっている。文体の魅力ゼロですよ。書いてある内容だけで勝負。そのうえ、内容にも難しいテーマはついていないんだもんなー。この敷居の低さは本当にすごい。
この本はドラマ化されてドラマも人気が出たそうなんですが、それはすごくよくわかります。たぶん、東野圭吾の小説は、脚色しやすいんでしょう。原作に色がないからね。使えるアイテムがふんだんに用意されていて、なおかつ、原作者の色がない小説。映像化しやすいんだと思う。
や、そんなわけで、さまざまな事件が次々と起きる、飽きのこない小説でしたが、それらすべてをひとつに束ねるテーマがなくて、ちょっと残念でした。