告白

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告白

新人作家が書いた、過激な小説。中学校の教師が中学生たちに、自分の娘は「このクラスの生徒に殺された」と告白する話。新人ならではの勢いと粗さが全面に出た本です。以下、ネタバレ。
やー、すごかった。出てくる人がみんな過激で攻撃的。先生と生徒なのに、互いにだましあって、命のとりあいですよ。怖い。
彼らのやりとりが、ミステリーになっています。相手の裏をかいているのはどちらなのか、という感じの謎。その謎の構造は、おもしろい。おもしろいんだけど、ただ、内容がとにかく冷淡で殺伐としているので、楽しく読めない。最初に構造ありきの小説ですね。こういう構造の話をつくるために、必要な人物が配置されている。人物はみんな、血が通っていない感じです。子どもを殺そうとか、子どもに復讐しようとか、病気をうつそうとか、そんなことばっかり出てくる。そういう悪意を止める大人が出てこない。社会も出てこない。それを抵抗なく読めないと、楽しめない。楽しく読むのはちょっと難しいですね。
かけひきも冷たいんだけど、登場人物の性格が冷たいのも、どうも気持ちが悪かったなぁ。どいつもこいつも、自分以外の人間を否定して、見下している。相手を傷つけようとして発言する人ばかり。この本のなかに、希望はない。あるのは驚きだけです。日頃、ノー・サプライゼズ・プリーズと思っている人は、読まないほうがいいでしょうね。
読んでいて、ちょっと不思議だったのが、母親の描き方がかたよっていること。娘を殺された母親も、加害者Aの母親も、加害者Bの母親も、極端な考え方をする、特異な母親として描かれている。いっぽうで、父親は話にほとんどかかわってこない。このバランスはなんなんだろう。母親のゆがみがテーマなのかなぁ。それにしても、みんな戯画的で、人間性が伝わってこないんだよなー。
これは、おもしろさだけを追求して、人間性を排除した小説ですね。文学的な要素はゼロ。文体もつまらない。純然たるエンターテイメント商品だといっていいんじゃないでしょうか。その割には、読者に嫌悪感を抱かせる要素満載だけどな。