ほんとですか?

少し前まで、ひどく気になっていた言葉。最近は耳にする機会が減ってきましたが、まだときどき聞きます。若い人になにか伝えたときに、返ってくる一言です。
たとえば、こういう場面。
俺「その役者、今朝テレビに出てたよ」 若者「ほんとですか?」
俺の言葉には疑わしい要素なんてないのに、なぜか「ほんとですか?」と返ってくる。この妙な返事です。
やー、これね、俺がなにか、オーバーな言い方をしたとか、嘘くさいことを言ったとか、そういう状況で真偽を確かめているのなら、わかるんですよ。たとえば「昨日一晩で1,000万円も飲んじゃったよー」に対する「ほんとですか?」なら、まだ納得もいくんです。
でも、そうじゃないんだよね。ごく平凡な一言にも、いちいち「ほんとですか?」と返事をする人がいる。それがとっても不思議でした。なにを疑っているんだろう、なにを気にしているんだろう、と思って。
それでちょっと考えてみたんだけど、「ほんとですか?」ってのは、「マジっすか?」を丁寧語にしたものなんじゃないすかね。
若いころって、年上の友達がなにかしゃべっているときに、わざと驚いてみせたり、話を盛り上げたりするために「マジっすか?」って言うことがあると思うんだけど、そういう会話が体にしみついていると、なんでもない言葉にも「マジっすか」って返す習慣ができるんじゃないでしょうか。
で、さすがに年の離れた相手に「マジっすか?」はまずいから、言葉を丁寧にして「ほんとですか?」って言っているんじゃないかと、俺は考えました。そう考えると、いろいろ納得がいくんですね。
というのも、「ほんとですか?」って返事をする人は、みんな悪気はなさそうなんだよね。話し相手を疑っているふうではない。彼らはきっと、「ほんと」かどうかを尋ねているのではなくて、会話を進めるために、ただ相槌をうっているだけなのだと思う。それが、ちょっとずれて、変な言葉になってしまっただけなんじゃないかな。
や、そんなわけで、俺は「ほんとですか?」と言う若者には、怒らずに、それはちょっと相槌の打ち方が違うぞ、と伝えるようにしています。とくに仕事の場では。なにしろこれって、目上の人を疑う一言だからね。それが一般的な会話だと思っていては、人付き合いで損をしてしまう。
やー、しかしこれって、若者が目上の人と会話するときにも友達感覚をもっているってことの表れでもあるんでしょうねぇ。それは同時に、大人が若者に対して、友達感覚の会話を許しているっていうことでもあるよなー。や、この「ほんとですか?」ってのは、社会の変化が生んだ言葉なんでしょうね。
こういう不思議な敬語、これからも出てくるんだろうなぁ。俺も変な敬語を使わないように、気をつけよう。