くるり@日本武道館(九段下)

くるり3度目の武道館は、平熱のライブでした。
ゼップと比べると、演奏の質は上がっていて、熱気は下がっていました。盛り上げるでも、聴かせるでもなく、ただただ丁寧に演奏していましたよ。個人的にはあまり好みのタイプではなかったけれど、いいライブだったとは思います。
まぁ、あの情熱的な横浜のあとには、地に足のついたスタイルでの冷静な仕切り直しが必要だったということなんでしょうね。満足はできなかったけれど、納得はできた。そういうライブでした。アルバムのテーマそのままだったね。飾ったり演じたりしないで、小さくでもいいから一歩をしっかりと踏み出すということですな。それが、魂のゆくえなんでしょう。
以下ネタバレです。
武道館限定の特別な趣向は(音楽的には)なし。ツアーの一公演としておこなわれたという印象です。でも今回のツアーはライブの構成がライブハウス向きなので、広く重い武道館にはマッチしていなかった。6月のゼップのライブのほうがよかったです。いまのパフォーマンスは、武道館よりもゼップ、ゼップよりも磔磔のほうが、あうと思うな。
編成はギター岸田、ベース社長、ドラムスボボ、そしてサポートギターにカンジという人。「カンジ」という名前以外、説明なし。誰なんだろう。演奏は基本的にはスリーピースで、いくつかの曲でサポートが入っていました。サポートの人は目立たず騒がず、足りない音を補充するのみ。本当にサポートに徹していました。ピアノはなし。なぜ武道館なのにピアノがないの?と思って困惑していたら、終演後にホール中心のツアーが発表されました。そっちがピアノありのツアーになるんすかねぇ。だったら武道館はそのあとがよかったのでは……。

  • 1. ワンダーフォーゲル
  • 2. リバー
  • 3. 青い空
  • 4. トレインロックフェスティバル
  • 5. LV45
  • 6. 愉快なピーナッツ
  • 7. かごの中のジョニー〜冬の亡霊
  • 8. Natsuno
  • 9. ミレニアム
  • 10. 屏風浦
  • 11. マーチ
  • 12. さよならリグレット
  • 13. ブレーメン
  • 14. 背骨
  • 15. リルレロ
  • 16. ベベブ
  • 17. ロックンロール
  • 18. 東京
  • en1. ばらの花
  • en2. 虹
  • en3. 太陽のブルース
  • 2en1. 魂のゆくえ

セットは上記の通り。ツアーと同様で、魂のゆくえの曲ほとんど+図鑑曲+代表曲でした。俺はくるりのグルーヴに魅せられてファンになった人間なので、HOW TO GOも街も聴けなくて、さみしかった。よかったのはピーナツ、マーチ、ブレーメン、背骨、魂。会場が盛り上がっていたのはロックンロール→東京。
やー、なぜ魂曲のなかで、デルタとつらいことばかりをカットして、Natsunoとリルレロをやったんですかねぇ。いまの編成でライブ映えするのは、魂とつらいことばかりだと思うんだけどなー。やー、つらいことばかり聴きたかった。無念。
ライブのスタートは、ワンゲル→リバーでした。すごいサービス精神。次が青い空、トレインロックだったんで、最初の4曲がいずれもビートナンバーだった(リバーは違うかな?)んだけど、全体的に、重心をうしろにかける感じのリズムがキープされていて、振り切るような演奏にはなっていなかった。岸田もテンション低め。大ベテランのロックバンドみたいだったね。ステージも場内も、爆発的な盛り上がりにはなっていなかった。
続いて魂パート。レベル45→愉快なピーナッツの流れではじまって、ジョニー、Natsuno。ゼップではこのパートに夜汽車や太陽、デルタ、リルレロもおさまっていたんですが、武道館では短縮版になっていました。デルタ……。魂パートは、ピーナツのコーラスは相変わらずよかったけど、ジョニーはおとなしくなっていて、物足りなかった。ゼップではあんなにハイテンションだったのになぁ。武道館のジョニーは行儀がよかった。
魂パートに続いて、懐メロ(違)コーナー。ミレニアム、屏風浦、マーチという図鑑曲連打です。やー、マーチはやっぱりアガるねぇ(´Д`) ただ、3曲とも歌やグルーヴよりもリズムが重視されているようで、体にはくるんだけど、心にはぐっとこない感じでした。ぞわぞわっとしなかったのよね。やっぱり俺は歌とグルーヴが好きなんだろうな。
そのあとは華美な曲をスリーピースで無理矢理再現コーナー(違)さよならリグレットのピアノイントロをギターで弾き、ブレーメンをギターベースドラムで再現するというとりくみでした。ブレーメンは素晴らしいバランスに仕上がっていたね。あれは本当にいい曲だなぁ。なにを際立たせても美しく、しかも力強い。岸田は一日通して声があまり出ていなかったけれど、ブレーメンや東京は朗々と歌っていた。ブレーメンには魔力がありますね。
ブレーメンに続いて、魂パート第2部。背骨→リルレロ→ベベブ。背骨がよかった。冷たくてライブ映えする曲ですね。あんなに堂々としたたたずまいの演奏になるとは。リルレロはおもしろくなかったなー。がらがら声でハードにパフォーマンスしているんだけど、あまり熱量を感じないんだよね。あれはなんだろうねぇ。くるりにハードコアはあわないのか。電車要素が足りないのか。フロアもあまり盛り上がっていないようにみえました。リルレロは曲に入る前の、アンテナ風のイントロのほうがアガる。あのままレースに入っていってくれたら最高なのに(殴)ベベブもジョニーと同じで、武道館ではほとんど脱線なし。うーん。ほんと、最初から最後まで行儀のいいライブだったよなぁ。MCでも、電車のことにほとんどふれなかった。電車のことも広島カープのことも京都のことも語らないなんて!(悶)
本編はロックンロール→東京をやって終わり。やっぱりロックンロールはギター2本がいいですね。ロック→東京は、本編最後の2曲だからか、岸田がようやくテンションを上げて、熱のこもった演奏をしていました。急にギアを変えたような感じ。東京の終盤ではメガネがずり下がり、それをカメラがとらえてスクリーンに大写しに。東京のスローな演奏にあわせて、メガネが岸田の顔の上をゆっくりとつたい、落ちていった。岸田、メガネ、汗、社長、パーッパー。なんともマニアックな終幕だった。
アンコールはばら→虹→太陽。ばらでまた平熱のライブに戻った。虹はスタンダードな演奏で。太陽もしっとりとした歌いっぷり。アンコールとは思えないくらい、落ち着きはらったパフォーマンスでした。街……。
ダブルアンコールはアコギで魂のゆくえ。岸田が「愛をこめて歌います」と言ってから。やっぱり今回のツアーは、魂のゆくえを歌うためのツアーなんでしょうね。いまやっていることは横浜以降のモードの出発点であって、まだ出発点にすぎないのだと思います。いまがホップ、秋ツアーがステップかな。そうすっと、来年の春くらいにすごいライブをやってそうだな。やばい。アラバキ行くか(違)
やー、終演後にみんなと話していて、ボボはビートを刻むのがうまいと言われて、なるほどなーと思いましたよ。そうなんだよね。武道館でのライブは、岸田は歌とグルーヴの人、ボボはビートの人、社長はそれをつなぐ人、というイメージだった。調和はしているんだけど、からみあいがない感じ。それがきっと、俺にとっては物足りなかったんだろうなぁ。
ゼップでは変なバランスのままからみあっていて、粗いロックバンドみたいでおもしろかったんだけど、武道館ではバランスがだいぶ調整されていて、お互いの距離感をつかんだ風だった。その安定感だな。安定感が、俺にはしっくりこなかったんだ。たぶん。いつもはツアーが進むにつれて、ネクタイをはずし、靴を脱ぐようにして、なにか得体のしれないものに化けるんだよね。それが今回は、ツアー終盤になったら、服をちゃんと着ていた感じ。うわー、逆かー!と思った。
やー、くるりのライブは本当に、毎度毎度仕上がりが違っていておもしろいですね。今回は俺の好みとははずれていたけど、あれはあれで楽しかった。や、秋ツアーではピアノが聴けますかねぇ。ぜひ入れてほしいなぁ。世武さんといっしょにまわってほしい。今回のツアーは静かな一歩だったけど、次のツアーは歩みをピアノで彩って、楽しい散歩にしてほしいですな。よーし、中野いくぞー!