Devices and Desires

アダム・ダルグリッシュのシリーズ。原子力発電、シリアル・キラー、家族と、メインテーマが多すぎて、話が散漫になっていた。残念。ぜんぶそれなりに着地させようとして、ひとつのテーマが唐突に終わったり。以前に読んだ『死の味』のほうがシンプルでいい構成だった。まぁでもジェイムズの場合、多少バランスが悪くても文章は安定しているので、そこは楽しめますな。文章は今回も慎ましく、心地よかった。今作でよかったのはこの一文。

ほどほどの成功は失敗より人格に好影響を与えるにちがいないが、成功しすぎると、鋭さが失われる。

あと、この会話もよかった。

A「そうするにきまっているわ。他の人間を救うのは、特にそれが子供の場合は、人間の本能よ」

A「(略)マーティンが溺死したあとの二年間は違うけど、それ以外の時はいつも宇宙の中心は愛だって信じてきたわ」
B「宇宙の中心にあるのは残酷よ。生きとし生ける物すべからく捕食者であり、餌食なのよ。(略)」

この会話が終盤でいきてきて、やっぱりうまいなぁ、と思いました。