私の男

私の男

私の男

直木賞作品。家族について書かれた小説です。以下ネタバレ。
やー、これはきっついね。近親相姦ですわ。娘が父親のことを「私の男」だと言っている話。
父と娘が、家族のつながりを肉体的にも精神的にもつきつめていったら、いわゆる共依存のような関係性にたどりついてしまった。どこにも行けない閉塞的な家族になって、関係は破たんし、最終的には娘は父のもとを離れることを決意した。そして、別の男と平均的な家族関係を結んだ。
という話を、時系列を逆にして、語っています。娘が結婚するところからはじまって、旦那と出会うところ、父親と出会うところ、というふうに時代をさかのぼっていく。親子がどういう過程をへて、離れるにいたったのか、それが語られる。
やー、なんだろうなぁ。家族の絆の強さと、家族だけでは生き抜けない社会の広さを、書いたんですかねぇ。それにしてもなんだかなぁ。家族を書こうとしているのはわかるんだけど、そのためにつくりだした事例が極端なので、実感がわかない。
極端な事例でも、それが小説の力強さを感じさせるような極端さで、読み手の世界を揺るがしてくれればいいんだろうけど、少なくとも俺は、そんなに揺るがなかったなー。身勝手な男の話だなー、俺の人生にはまったく関係がないなー、と思いながら読みました。