悪と異端者

悪と異端者

悪と異端者

筒井康隆の随筆。コラムって言ったほうがいいのかな?賞レースの寸評や、新聞への寄稿、知人の追悼文などなど、短めの文章がたくさん収録されています。
やー、やっぱりSF作家は視野が広いね。ものごとを独特の視点でみていて、おもしろい。だいぶ前に出た本なんですが、政治が劇場型になっていくことを嘆いていますよ。お目が高い。
全体通していちばんおもしろかったのは、文章に秘められた、促評性と読快性の話。
促評性ってのは、文章を読んだ人が「この話はこういう話だ」と評したくなる性質のことなんだそうです。促評性が強ければ強いほど、読み手の深読みを促すってことですね。
読快性は文字通り、読むと快感につながるような性質だそうですよ。深読みしなくても「なるほど」とか「やっぱり!」とかって思えるようなことだね。
やー、こういう未知の概念を知ると、感覚が磨かれて楽しいね。これって筒井さんの造語なのかなぁ。や、促評性の強い本や映画ってあるもんなー。この二つの言葉を頭に止めて物事をみると、ちょっとおもしろそう。
文章の性質という意味では、本の中で紹介されていたサマセット・モームのこの言葉も、とても刺激的でした。

短篇を自然な結末に導いてフル・ストップで終わらせることは正しい技法である

やー、おもしろい。だとすると、文学ってのは「フル・ストップで終わらない小説」のことを言うのかな、と思いました。フル・ストップの本は、読快性が強いよね。すっきりするもんな。いやー、しかし作家の選ぶ言葉はおもしろい。勉強になります。