スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

スカイ・クロラ

初めての森博嗣。や、さっぱりとした文章ですね。
飛行機で空を飛ぶ、パイロットの人たちの話です。飛行機に関する専門用語が頻出。でも、その意味がわからなくても、文章を読み進めることができるように、書かれています。やっぱり人気作家ってのは、読みやすい文章を書きますねぇ。
飛行機用語をまじえた説明的な文章、感情をあっさりと記した日記のような文章、文学的な比喩を使った文章などなど、質感の違う文章が、まざりあっていました。文体に一貫性をもたせようという気はないんだろうねぇ。
内容としては、戦時中のパイロットの生活を書いているんだけど、戦争の背景については、あまり語られません。パイロットたちの生活の一部をきりとって、それを感覚的に、映像的に表現した感じ。戦争の話のわりには、文章も内容も妙にあっさりとしていて、終始、空虚なイメージがただよっていた。やー、なんだか不思議な本だったなぁ。戦争だから空虚、っていう見方もできるのかもしれないね。ファンタジーと文学の中間っていう感じだな。
内容にもテーマにも、ぐっと引きこまれるようなことがなくて、淡々と読んでしまった。高い空を思い浮かべて、気持ちよく読んだ。装丁の力が大きいな。装丁は鈴木さん。生と死とか、永遠とか、戦争とか、テーマが大きすぎて、いまひとつ実感にならないんだろうなぁ。俺はもっと身近な話題のほうが好きなのかな。
読んでいて、いいなぁ、と思ったのはこの文章。

理解ほど、貴重で入手が困難なものはない。それが得られるのは、きまって、その必要がすっかりなくなったときなのだ。

こういう感じの、ちょっと厭世的な文章が多かったです。もう少しこう、じんわりと体温が伝わってくるような文章が好きなんだよなー。うーん。