浦沢直樹は追われている

モーニングの先々週号に、浦沢直樹の「ビリーバット」第6話が載っていた。まだまだ序盤だとは思うけど、ここまでの感想を。
ビリーバットは、モンスターや20世紀少年と同系統のサスペンスマンガ。今回の舞台は、戦後の日本です。アメリカ人のマンガ家が、自分は無意識に盗作をしてマンガを描いていたのではないかと悩みはじめ、自身の作品「ビリーバット」のルーツを探ろうとする話。彼が、頭の中におぼろげに残っているコウモリの絵の記憶をたどっていくと、その絵にはさまざまな人物、組織が関わっていることがわかってきて、そしてある日、事件が……。
と、いうようなマンガです。やー、まだ6話だけど、話がけっこう進んでいるなぁ。しかしまぁ、例によって毎回毎回、謎が出てきますよ。すげえわくわくする。浦沢すごい。やっぱりおもしろい。最後はまたぼんやりした終わり方なのかなぁ、とも思うけど、やっぱり1話1話はおもしろいんだよなぁ。つい読んでしまう。
しかしなぜ、浦沢作品の主人公たちはいつもなにかに追われているんすかねぇ。猪熊柔は祖父に追われ、才能から逃げていた。ドクター・テンマはルンゲから逃げていた。20世紀少年の主人公たちは、ともだちとよげんの絶対的な力に追いつめられていた。プルートゥも、怪物に追われる話だ。なにかこう、追いつめられた極限状態の人を描きたいという意識があるんすかねぇ。不思議だ。
そんで、それだけ徹底して、追われ、疑われる人たちの心の光を描いているのに、最後に主人公たちも読者も意外と報われないってのが、また不思議。途中途中のエピソードはとっても感動的なのに、最後だけなぜか妙に文学的な話になるんだよなー。悪くはないんだけど、娯楽大作のわりにはカタルシスがない。とくに最近はそう。YAWARA!MASTERキートンはけっこういいラストだったと思うんだけど、MONSTERはちょっと拍子抜けだった。20世紀少年も、巷の評判をみるかぎり、そんな感想が多い。や、あれはなんなんすかねぇ。やわらかくまとめたいってことなのかなぁ。今回のビリーバットは、そのへんを意識しながら読んでいきたいと思いますよ。ラストを気にしすぎないで、浦沢をちゃんと読みたい。