引用、共感、憶測

叡智の断片

叡智の断片

池澤夏樹さんのうまいことの本(違)を読了。コンセプトの通り、うまいことの言い方がたくさん引用されていて、たいへん楽しかった。満足満足。この本のなかに、池澤さんがP.D.ジェイムズを読んでいるという記述があって、ちょっとうれしくなった。好きな作家がほかの好きな作家とつながっていると、共感したような気分になるね。というわけで、ひさしぶりにジェイムズを読んでおります。せっかくだから「死の味」からひとつ引用を。ダルグリッシュでもケイト・ミスキンでもなく、名もない一介の警官の言葉。

必要なこと以外はしゃべらん方がいいです。憶測でものを言わんことですよ。憶測しても仕方ないですからなぁ。実際にあったことだけ話すんですね。

ジェイムズ作品に出てくる人たちの、この落ち着いた、慎ましい行動規範が好きだ。俺も、実際にあったこと、現実が大きな意味をもつのだと思っている。理論に傾倒して、現実の先にあることに振り回されるのは、俺にとってはあまりよいことではない。きっとジェイムズも、それと近い考え方をしているんじゃないかな。ジェイムズの本は、読んでいて心地がいい。自分にあっているのだと思う。

池澤さんとジェイムズの合間に、クリスティも一冊読んだ。この調子でいくと、再来年あたりにクリスティをすべて読み終わりそうな気がする。
狼少年のパラドクス―ウチダ式教育再生論

狼少年のパラドクス―ウチダ式教育再生論

共感といえば、友達との共感もある。しばらくぶりに内田樹さんの本を借りてきたら、同じ時期に405ちゃんが内田さんにはまっていて、思わぬところで共感した。内田さんは意見が強いうえに多弁な人だから、ときにはあれっと思うこともあるけれど、そうやって、いつもなにか言おうとしているところがいい。以前に読んだ対談本で、インターネット上でのやりとりは肉体をともなわないから相手をどこまでも傷つけてしまう、というようなことをおっしゃっていて、なるほどなー、と思った。メールやインターネットでは、どんなに丁寧に書いても、やっぱり伝わらないことがあるんだよね。むしろ、丁寧に書けば書くほど、相手を惑わし、憶測を呼んでしまう。難しいよね。やー、やっぱり飲み会をやって顔をあわせて語り合うのって、大切なことなんだなぁ。飲み会まじアガる!(´Д`)