読了

九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-18)

九尾の猫 (ハヤカワ・ミステリ文庫 2-18)

ニューヨークに殺人鬼があらわれた。1本のひもで人を絞め殺し、ひも以外に何も残さず去っていく。新聞は犯人を「猫」と名付けた。被害者は遊び好きの女性、友人の少ない男性、妻子持ちの男性、下半身不随の独身女性などさまざまで、ニューヨークに住んでいること以外、共通点がない。次に「猫」の尾に巻き殺されるのは、誰なのか。市警は捜査に行き詰まり、犯罪研究家エラリイ・クイーンの助力を仰ぐ。
やーこれはおもしろいね。基本的な構成は連続殺人事件の謎を解くっていう、まぁよくある話っすわ。でもね、トリックを解くのではなくて、犯人が何を考えているのかってことを探っていくわけですね。そういう意味では「七人のおば」と似ているかもしれない。心を探って事件を解決するタイプの推理小説でした。全編に渡って、人間の心の危うさが書かれていて、ちょっと変わったおもしろさでしたよ。街全体に恐怖が蔓延していて、殺人鬼のいないところで事件や暴動が起きてしまったり、被害者の遺族が疑心暗鬼にとらわれたり。クイーンと「猫」の対決もよかったけど、その周辺のできごとも読みごたえがあったなぁ。クイーンもハズレがないね。