ジム・トンプスン『取るに足りない殺人』

取るに足りない殺人

取るに足りない殺人

 ジョー・ウィルモットは、映画館を経営している。それはもともと妻エリザベスのものだったが、彼女にはビジネスの才能がなく、いまはジョーが実権を握っている。ジョーは前科者。エリザベスは名家の娘。2人の関係は、親密ではないが、破綻してもいない。
 彼らの家に、家政婦がやってくる。キャロル・ファーマー。不器量な女。25歳。2人の関係が、3人の関係になる。エリザベス・ウィルモットは災害死補償25,000ドルの生命保険に入っている。映画のフィルムは燃えやすい。ジョー・ウィルモットは頭がいい。
 面白かった。こういうのを犯罪小説っていうんだって。俺はミステリーとして読んじゃったなぁ。男女関係、殺人、映画館経営の3つともがうまくいかなくなって、ジョーが窮地に立たされてからの目まぐるしい展開がたまらなかった。トンプスンて面白いなぁ。他のも読んでみよう。
 ちなみにこれ、翻訳で読んでいるからなんとも言えないけど、1冊通して文章がすごくかっこいい。ざくざく切り進んでいく感じ。皮肉がきいていて、それでいて冷たくない。読んでいていちばんよかったのは次の1行。やー、ほんとにかっこよかった。
噦エリザベスはひと言だけ「わかったわ」と言った。つまり、まるでわかっていなかったのだ器