本は、これから

本は、これから (岩波新書)

本は、これから (岩波新書)

池澤夏樹池上彰上野千鶴子内田樹松岡正剛ら37名の著名人が「本は、これから」というテーマで書いた文章やマンガをまとめた本。電子書籍報道ブームが加熱するなかで刊行されたもの。短い文章やマンガに、書き手一人ひとりの人生が透けて見える。37名の人生を通じて、本というものの価値がじわりと伝わってくる。紙の本と電子書籍の違いを考えるうえで参考になった。
37の文章やマンガを乱暴に二分すると、「iPad発売以降の電子書籍が自分の人生にどんな影響を及ぼしたか」というような内容を実際的に記したものと、「そもそも本とはなにか」というような内容を理論的に記したものになる。前者は参考になった。後者は息苦しかった。「本とはなにか」という話も興味深いものではあるのだけど、それを真正面から理屈で語られると、疲れる。エピソードを通して語ってくれたほうが、実感も理解もしやすい。
紙の本とのめぐりあわせのおもしろさを書いた、最相葉月の文章がよかった。電子書籍はあまりにも直接的で、その点ではおもしろみに欠ける。電子書籍によってもたらされる変化のおもしろい側面と、そうでない側面が浮かび上がるような文章だった。