スヌーザー

インタビュー記事を読みました。岸田と社長がくるりの10年を振り返りながら、魂のゆくえの制作過程を語る、という内容。以下、多少ネタバレ。
10年史は、いつも言っているような内容でした。まぁ、岸田は日によって言うことがまったく違うから、どれも印象にすぎないんだけどね。彼の場合、語っていることのうち、事実以外はぜんぶ、いまのモードからみた感想にすぎないんだよな。もうね、明日には風にのってどこかに飛んでいってしまいそうな、はかない感想ですよ。ただまぁ、それでもそこからみえてくるものもある。インタビューは、10年史でくるりの歩みを振り返るというよりは、岸田に10年史を語らせることで、いまの岸田がどんなモードにいるか、浮き彫りにしようっていうものになっていました。や、いい語りだと思います。おもしろかった。たっしんは蛇みたいな人っていうのもおもしろかったなぁ。その通りだよね。
印象以外に、事実もいくつか挙げられていたんですが、そのなかで興味深かったのは、チームロックのあと、もっくんよりも先に社長がバンドをやめそうになったということ。それを耳にしたもっくんが、社長がやめるなら自分もやめるというようなことを言ったそうです。そんなことがあったのか。
で、結局このインタビューの根幹は、10年の歴史のあとで、魂のゆくえはどうやってできあがったのか、ということなんですが、それがなかなかおもしろい話でした。横浜でやりきって抜け殻のようになった岸田が、紆余曲折をへて、ワルツとは違うやり方にたどりついたそうです。で、そのやり方で彼がひとりで曲をつくって、そのあとバンドで肉付けをして、ニューヨークに行ってレコーディングして、アルバムが完成。曲順は社長が決めたんだって。最後の局面では、社長がプロデューサー的な役回りをしたらしい。はー。なるほどなー。それで最初に聴いたとき、ソロっぽいと思ったのか。くるり色より岸田色が濃いと思ったんだよなー。そういうことか。やっぱり、コンセプトは歌をリズムで彩るってことでよかったんだね。岸田がつくった歌に、社長がリズムをつけたして、ピアノやドラムやキーボードでさらに彩って、音源になったんだ。なるほどー。歌か。コンセプトは歌か。
や、そのへんの経緯がインタビューでくわしく語られているので、みなさんもぜひぜひ。いい話ですよ。ワルツとは違うやり方ってのも、くわしく書いてあります。
今回のアルバムは、ソロでスタート→バンドでレコーディング→でも音源はやっぱりソロっぽく仕上がる→ツアーに向けてスリーピースで練習→どんどんバンドサウンドに→ライブは音源とは別物のバンドサウンドに、という経緯をたどったんでしょうね。やっぱり音源はソロだ。なるほどー。おもしろいなぁ。だとすると、ライブ版の魂のゆくえは、音源よりもさらにさかのぼった、できあがった当時の魂のゆくえなのかもしれませんね。そう思うと、あのシンプルな歌声もまた、違って聞こえるでしょうなぁ。横浜で祝祭の音楽に包まれた岸田が、その祝福のときを終えて、まぶしくもない、さみしくもない現実に戻ってきて、そこで自分の心の小さな動きに輝かしい未来を感じたというのは、なんだかもう、すごく泣ける話だ。