ナンバーワン・コンストラクション

ナンバーワン・コンストラクション

ナンバーワン・コンストラクション

ひさしぶりに文学を読みました。この間の芥川賞で候補になった人。予備知識なしで、なんとなく読んでみた。
建築学の教授、学生、講師、大学構内でアルバイトをしている女性の4人が、建築と愛について語り合う話。
人物全員、語り口が非現実的。そんな人いないだろう、という話し方をする。でも、その話し方でしか伝わらないことが書いてある。ま、作家の文章だってことですね。

「それじゃあ先生、さしつかえなければ教えてください。肉欲についてはどうです? 例えばあのレモネードを作っている少女を抱きたいとは思わないのですか?」
「その手の感情については君と一緒だ。原罪だけが平等だ。教会にでもいくか」

こんな感じです。
愛と支配とか、意識と無意識とか、維持と変化とか、そういうものごとについて語っているというのはわかるんだけど、その語りのどこに焦点が当たっているのか、いまひとつよくわからなかった。やー、文学だなー。この本は書き出しと結びが説明的な文章になっていて、つかみやすい文学ではあるんだけど、それでもうまくつかめなかった。
意識と無意識のくだりはピンときたんだけどなー。関係を意識するってことがテーマなんですかねぇ。や、まったく手応えがないな。わからない。
やー、文学って読むだけなら一、二時間で終わるけど、意味を理解するには一生かかるね。文章から伝わってくる風景や心情や印象が、本質であるような気もするし、その奥に置かれたものを読むことが本質のような気もする。ま、きっとこの先の人生のどこかで、この本のことを思い出す日が来るんでしょう。いい余韻が残る本ではあったな。うん。