松本清張はいやらしい
- 作者: 松本清張
- 出版社/メーカー: 双葉社
- 発売日: 2008/05/15
- メディア: 文庫
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全4編すべて、不倫の話。不倫を隠そうとして、嘘をついたり、人を殺したり、もうなんだか大変です。まぁしかし、松本清張という人の書く文章はいやらしいですね。欲望渦巻く人間関係。イメージ通りの作品で、とても楽しかったです。
この短編集でひとつ特徴的だったのは、みなまで書かないってことだな。殺人を描くときに、加害者が標的を誘いこむ過程はゆっくりじっくり描写していくんだけど、殺せる条件が整ったところで、文章が終わる。次の一文は「そして半年後――」みたいになる。逮捕劇もいっしょ。証拠を探して、アリバイを崩して、条件を揃えるところまで書く。関係者が決定的な証言をした瞬間に、話が終わったりする。感情の爆発するシーンが省略されているので、そのせいか、全体的に妙に落ち着いた雰囲気のサスペンスになっています。静かに怖くて、最後にじんわり余韻が残る感じ。巧いなぁ。激しい場面を読者の想像力に委ねちゃうってのはすごいね。さすが人気作家。内容はいやらしく、作風はつつましく。やー、すごいすごい。