火星の倉庫@シアターサンモール(新宿御苑前)

ヨーロッパ企画ていう人たちの芝居をみてきました。やーやー、なにがヨーロッパなのかさっぱりわからなかったけど、おもしろかったよ。以下ネタバレー。
地球の倉庫で繰り広げられるドタバタ喜劇。密室群像劇ですな。倉庫清掃員と大学生の恋の話に、マフィアの内紛や火星人の都合がかかわってくるという、そりゃもうむちゃくちゃなストーリー。三つの話が奇縁でからまりあって、最後は一つの話に。
すれ違っていた人たちが一同に介して、そこに火星人がドカーン!と登場するところまではすーごくおもしろかったんだけど、そこからラストシーンへの展開が浅はかで、最後にすっかり気が抜けてしまった。なんかなー、最後に急に「レジ袋はもらわないようにー」とか「たまにはろうそくで暮らしてみようー」とか言い出したんだよね。火星人の力に頼らないで、一人一人が環境保護への意識レベルを高めようっていう語り。そんなこと言われてもなぁ。使い古された標語をあえて語るのであれば、そのセリフが出てくるまでに、セリフのもつ意味を話で表現しておいたほうがよかったんじゃないかねぇ。ストーリーのなかに「一人一人が意識レベルを変えれば世界は変わる」っていうテーマを託した表現はなかったように思うね。むしろその逆で、恋に燃えて勇気を出してがんばった主人公が、恋路とは関係のない場面で撃たれて死んでしまうという、切ないことがありました。がんばってもダメじゃんか、っていう印象だったねぇ。それが本当のねらいで、この話のテーマが「一人一人が意識を変えたって、そう簡単にはうまくいかないんだよ」ってことだとしたら、ちょっと納得できないなぁ。うーん。
まぁでも、そこ以外はおもしろかったです。倉庫の箱を動かすことで、ステージの構造を変えていくのが楽しかったなぁ。足場の箱を動かされて高いところから降りられなくなるとか、箱を動かして隠れ場所をつくるとか、小道具をうまいこと使っていた。アイデア一つ一つはすごくおもしろかったと思う。セリフと箱の配置で伏線をはって、三つのグループを関係させていく手法が見事でした。そういうところを楽しむ芝居なのかねぇ。だとしたらすごくよかったですよ。しかけはうまかった。セリフもうまかったなー。マフィアを裏切ったことがばれて、ドラム缶にセメント詰めされちゃった男の人がいるんだけど、その人が身動きをとれないなかで、セリフだけでまわりの人を動かそうとするのがおもしろかった。絶体絶命のくせに、なんかいちいち余計なことを言うんだよね。大学生の手を借りたくて「おい、ミスキャンパス」って呼んでおだてていたのに、彼女が助けてくれないとわかったら、手の平を返して「ガリ勉!」って毒づくとか。その余計な一言が、セリフの最後にぽろっとつけたされていて、それがなんだかすごく可笑しかった。ガリ勉ってなぁ(笑)別に言わなくてもいいのに、変なことをつけたすんだよね。やー、いいキャラクターだった。
そんなわけで、しかけは満点、テーマは零点ってな感じですね。SFってのは設定をうまく調整すれば、テーマの切実さをぐっと高めることができるジャンルだからね。やりようはいくらでもあるでしょう。俺の受け取り方の問題なのかもしれないが、ラストが標語の羅列と主人公の唐突な死ってのは、ちょっと受け入れられないねぇ。ってか、この話でいちばん得をしたのは、人を騙して麻薬をかすめとった殺し屋だもんなぁ。そんな人間が幸せになる話を全面的に楽しむような懐の広さは、俺にはないなぁ。やー、ヨーロッパ企画の人の別の話をみてみたらいいのかねぇ。しかけはおもしろかったからなぁ。