読了

閉じた本 (海外文学セレクション)

閉じた本 (海外文学セレクション)

交通事故で失明した作家が、口述筆記で自伝を著そうと考え、新聞広告を出して協力者を募った。すぐに適任の男が見つかり、彼を採用して共同作業をスタート。最初はうまくいくように思えたが、男がじょじょに不可解な行動をとりはじめる。
おもしろかった!主人公が失明してる設定だから、地の文がないんすよ。なんにも描写できないわけです。物語はすべてセリフだけで進行。協力者が作家の代役になって風景を言葉で表現してくれるんだけど、それってセリフだから、どれが本当でどれが嘘かわからない。本当のことは何も見えない。これはうまい設定だと思うなー。作家が疑念にとらわれてからの流れがお見事でした。見えないから、疑いがどんどん強まっていくんだよね。終盤は現代小説にありがちな、ちょっとキツい話になっちゃってたけど、本全体のつくりはおもしろいと思いますよ。アイデアの勝利。ほかにも同じアイデアつかってる作品ありそうだけどね。