読了

グランド・フィナーレ

グランド・フィナーレ

芥川賞受賞作「グランド・フィナーレ」を含む短編集。表題作で描かれているのは、妻と別れ、一人娘の親権を失った男の、離婚後の日々。
初めは読みづらい読みづらいと言いながらページをめくってましたが、だんだん歩調があってきて、後半はスイスイ読めましたですよ。句読点が極端に少ないのはちょっとどうかと思うけど、そのかわり言葉の選び方が達者だから、意味はとりやすい。あんな文章なのに内容がどんどん体に入ってくるってのはすごいと思いました。作家が書く文章だね。これは素人には絶対書けない。疲れとか気力とか気分とかのバランスがうまくいって、自分のリズムと文章のスピードがマッチしたときは快感だった。ほどよく疲れた日に読むといいのかもしれません。
テーマ的にはちょっときついかなー。ロリコン親父が自分の娘を撮影してた、最低だって話です。物語は大きく半分にわかれてて、前半部分は男が娘に会いたがって徘徊する日々。後半は男が観念して田舎に戻り、自暴自棄な生活を送る様。救いのないテーマを描いていって、ラストは答えなし。
ラストシーンが、どうしようもない人生のフィナーレ=再出発なのか、再び闇に入りこむ瞬間なのか、俺にはわかりませんでした。読む人が読めば、この小説に一つの芯を見出せるのかもしれない。でも俺には多義的な話に思えました。離婚とか、離別とか、自殺とか、破算とか、そういう何かの終着点、最期をあらわすものがいくつもチラついてたなぁと思います。いろんなものがフィナーレにむかっていく話。そんな感じかな。
テーマから言っても、文体から言っても、非常に強いクセのある作品でした。読んで疲れた。でも読んでよかったなーと思いますよ。嫌いじゃない。やっぱシンセミアも読もうと思います。
そうそう。この表紙のイラスト。この人、どう見ても椎名林檎なんですけど、意識的に似せているのカネ。なにか狙いがあるのかな。