警察小説

地を這う虫 (文春文庫)

地を這う虫 (文春文庫)

短編集。4人の元刑事。それぞれの人生。
現役時代に闇に葬られた事件を掘り返そうとする警備員。暴力団に蔑まれながら借金取りとして働く男。父を監獄に入れた政治家のもとに運転手として仕える男。倉庫会社と警備会社で仕事をしながら元刑事の目で街を観察している男。全員悲哀が滲んでます。嗚呼。現実に押し潰されながら思考を止めず、目の前の出来事に力を尽くそうとする男たち。社会の底辺で小さく手を振り上げる男たち。嗚呼。文字通り地を這う虫ですよ。誇りは美しくなくても素晴らしいというか、すべての誇りは美しいというか、そういう誇りの話。心の根底に力を与えてくれる本だと思った。高村さんの本はどれも本当にいいな。